2026年1月25日日曜日

「久延彦 REPORT」(28)

  核兵器の開発や保有、使用、使用の威嚇などのあらゆる活動を例外なく禁止する初の国際条約である「核兵器禁止条約」が発効してから、1月22日で5年となりました。広島・原爆ドーム前には市民約100人が集いましたが、主催者の一人は高市政権において政府高官が核保有発言をしたことに言及し、「私たちの被爆国という立場は一体どこに消えてしまったんだろう」と怒りをあらわにしました。また、広島県原爆被害者団体協議会理事長の箕牧智之(みまきとしゆき)氏は、日本政府の姿勢を批判して次のように語りました。

 「私たち被爆者は、核兵器禁止条約を国の内外に訴え続けてきました。それから5年が経ち、世界は私たちの願いとは反対の方向に向かっている。日本政府の考え方は、まさに戦争前夜と言いたいくらいだ。」

 この日、被爆者団体や反核団体は平和記念公園内で、日本政府が条約を批准することを求める署名活動にも取り組んでいましたが、私には不思議でならないことがあります。それは、この日の集会において主催者側から語られたメッセージのほとんどが日本政府への批判であり、さらには米国トランプ政権に対する非難に終始していたことです。なぜ、彼らは中国共産党独裁政権による軍拡を非難せず、東アジア諸国への軍事的な侵略行為を糾弾しないのでしょうか。さらには日本に対する執拗な誹謗中傷や虚偽に基づく不当な嫌がらせに対して、日本人として断固とした声明を出さないのでしょうか。世界平和にとって最大の脅威であり、日本の平和を脅かしている中国共産党の野心を、どうして告発しないのでしょうか。

 そこで、核兵器禁止条約の発効から5年を経た今、どうしても書き残しておきたいと思わされたことがあります。それは、昨年末にある新聞に掲載された内容についてです。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表委員である田中熙巳(たなかてるみ)氏が核廃絶に向けた思いを語っている記事なのですが、平和を切望しているはずの田中氏の発言はあまりにも無責任であり、まるで幻想と無知という闇の中をさまよっているように思えて仕方なかったのです。そこで、記事の中に紹介された田中氏の発言と共に、真の平和とはいかなるものなのか、平和を希求するとはどういうことなのか、その意味を考えてみたいと思います。

 まず、田中氏の核廃絶に向けた思いが取り上げられるようになったきっかけは、高市早苗政権が発信している日本の防衛・安全保障に関するいくつかの発言にありました。まず、高市首相は非核三原則の見直しに含みを持たせる発言をし、小泉進次郎防衛相は原子力潜水艦の保有も検討すべきとして、核攻撃への対応について言及しました。また、高市政権の高官からは「核保有」についての発言が非公式ながらに伝えられ、唯一の被爆国である日本が核兵器を保有するのかと、高官の罷免(ひめん)を求める声が紹介されたりもしました。

 それでは、それぞれの発言について、田中氏がどのような思いを語ったのか、その記事の内容を引用してみます。まずは、高市政権が非核三原則の見直しを検討していることについて、次のような発言をしています。

 「非核三原則は核兵器禁止条約がない時は非常に重要なものでした。ただ、三原則は条約よりもはるかに弱いもの。条約が禁止している7項目には三原則はみんな含まれていますから。条約の締結国になれば、否応なしに政府は縛られる。・・・日本は条約に参加して他の国々の先頭に立つべきです。」

 この発言には決して見落としてはならない、日本の防衛、そして国民の生命と財産を危うくするとても危険な思想が潜り込んでいます。ここでの発言は一見、平和を希求する者の叫びであるかのように思えますし、日本は核兵器禁止条約の締結国となり、核廃絶という悲願を達成する先頭に立ち、そのことが何よりも被爆国である日本に与えられた使命であるかのように感じさせます。しかし、これが幻想であり、無知なのです。

 根本的な過ちを指摘しておかなければなりません。被団協の方々にとって、最も危険な存在とは何なのでしょうか。国際条約により、あるいは法律により縛っておかなければ暴走してしまうかもしれない存在とは何なのでしょうか。それは、私たちの政府、私たち日本国民が選挙によって選んだ日本政府なのです。被団協にとって核兵器を保有させてはならない最も危険な国は日本であり、条約で縛り、法律で拘束しておかなければならないのは日本の自衛隊なのです。

 それでは、被団協の方々はどうしてこのような偏狭な思考に陥ってしまうのでしょうか。それは、大東亜戦争において国民の尊い生命が失われ、世界で数多(あまた)の人命が犠牲となり、とりわけても東アジア諸国の人々に塗炭(とたん)の苦しみを与えた平和の破壊者は大日本帝国政府であり、侵略者となり、殺戮(さつりく)者となって何百万もの生命を奪ったのは帝国陸海軍の軍人であると信じて疑わないからです。日本が武器を持たず、軍隊を持たず、そして、戦争することができない国であり続けるならば、世界は平和になると本気で思い込んでいるのです。だから、幻想なのです。だから無知なのです。

 大東亜戦争終結から80年もの間、日本が平和であり続けたのは、戦争の放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条のお陰ではありません。憲法によって陸海空軍その他の戦力を保持せず、国の交戦権を認めなかったことが、平和の礎となっているのではないのです。はっきり断言しますが、戦後80年にわたり、日本が平和であり続けられたのは、憲法9条があるからではありません。戦後の日本が平和であり続けられたのは、在日米軍のお陰であり、日米安全保障条約(日米同盟)のお陰だったのです。

 憲法9条が日本の平和を守るものではないように、核兵器禁止条約も世界平和をもたらすものとはなりません。日米安全保障条約により戦後の日本が平和を享受することができたように、日米同盟を基軸とした安全保障体制こそが日本の平和を守るのです。そして、そのために非核三原則を見直し、原子力潜水艦を保有し、平和のために核兵器を保有するならば、それこそが世界平和の礎となる正義であることを、私たちは決して忘れてはならないのです。

 「力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力である。」

 被団協が唱えるような核廃絶を目指す平和論こそが、力なき正義の典型例であり、それこそが無力であることを、唯一の被爆国の国民である私たちは心に刻まなければなりません。そして、正義なき力を行使し、核兵器を振りかざす暴力国家となっている中国共産党独裁政権こそが、世界の平和にとっての主敵であることも忘れてはならないのです。正義と共にある力によってのみ、世界平和が達成されることを私たち日本人は肝に銘じなければならないのです。

 被団協の欺瞞(ぎまん)は今や明らかです。彼らはいつも日本政府を非難します。そして、日本の国防に身を賭して働いておられる自衛官に対して一片の敬意も払いません。条約で縛り、法律で拘束しなければならない危険な存在として、政府と自衛隊を敵視しているのです。これが被団協の正体です。そして、この被団協と全く同じことを主張しているのが、中国共産党政権であることを、平和を愛する日本国民はよくよく覚えておかなければなりません。

 さらに、田中氏の発言を紹介しておきましょう。原子力潜水艦の保有については次のように語っています。

 「論外。潜水艦というのは守る船じゃない。攻撃する船。原子力は平和利用とするという国是にも違反する。めちゃくちゃですよ。マスコミはちゃんと批判しないといけない。昔の新聞の方がまだ意見を言っていました。今はあたかも公平なようでいて、逆に権力に一生懸命奉仕しています。」

 いつの時代の論説なのかと耳を疑います。今のマスコミ(新聞・テレビなど)が権力に一生懸命奉仕しています、というくだりには驚きを禁じ得ません。今のマスコミの報道がいかに偏向しており、反権力であり、反政府であり、反米であるか、そして、親中・媚中姿勢を頑なまでに守り続けているのか、多くの国民は気づき始めています。特に若い世代の人たちはメディアの不公平と偏向報道、さらには国民世論を誘導しようとしていることに辟易(へきえき)しているのです。田中氏はノーベル平和賞を受賞したことを引き合いに出して、ノーベル委員会が一番期待したのが日本の若者であり、被爆者たちの運動を支えている若者に最大の期待を寄せて受賞させたのだと思う、という個人的な所感を述べていますが、果たしてそうなのでしょうか。

 日本の若者は実に健全だと思います。多くの若者は被団協の方々の活動には決して賛同しないでしょう。だからこそ、高市政権に対する若者世代の支持率は、世代別に見ても群を抜いており、今もなお高水準を維持したままなのです。また、台湾有事をめぐる存立危機事態発言や非核三原則の見直し、さらには原子力潜水艦の保有や核兵器の保有についても、圧倒的に支持しているのは、若者世代なのです。

 また、高市首相に対する印象を問われた時の田中氏の発言には、一体この団体はどこの国の指示で活動しているのだろうか、と疑いの思いを禁じ得ませんでした。その発言は次のようなものでした。

 「昔の軍事大国だった日本に復活したいというのがどこかにあるのかもしれない。そんなこと、できっこないんだけど。自民党に反論できる人がいない。・・・安倍(晋三)さんは自分の思い通りにやるために、ちゃんとした政治家を育てなかった。優秀な官僚も排除した。だから独裁に近くなっていった。まだ昔の政治家の方が立派でしたよ。新聞もたたかないから、ブレーキが減っていく。」

 もはや反論するつもりにもなれません。これがノーベル平和賞を受賞した団体なのです。日本原水爆被害者団体協議会こそ、平和の敵なのかもしれません。被爆者の平和に対する切実な願いを利用して、日本の平和を打ち壊そうとする、どこかの国の指図にでも従っているのでしょうか。新しい年を迎えて、日本国民が覚醒しつつあることに、そして、多くの若者たちが真実に気づき、偽善を見抜き、高市早苗政権を圧倒的に支持している姿に日本の希望を感じています。