2025年8月7日木曜日

「久延彦 REPORT」(9)

  大東亜戦争終結80年の節目となる今年も、8月6日には広島市の平和記念公園において、原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)が開催されました。式典には過去最多の120ヵ国・地域と欧州連合の代表が参加しました。約5万5千人の参列者は原爆投下時刻の午前8時15分に会場内外で黙祷を捧げました。


 今年の式典には、イスラエルの駐日大使やパレスチナ自治政府の代表も参加しました。また、台湾当局の代表者が初めて参列したことはとても意義深いものでした。しかし、中国共産党政府からは今年も参列者はありませんでした。この事実だけを踏まえても、どこの国が核兵器による威嚇(いかく)と使用に積極的であり、どこの国が平和に対する敵対国であるかが明白になります。

 ところで、広島市長による「平和宣言」においても、子ども代表が朗読する「平和への誓い」においても、また、石破首相の「あいさつ」においても、「中国(中国共産党)」という言葉が一度も登場しないのは、なぜなのでしょうか。石破首相は「あいさつ」の中で次のように述べています。

 広島、長崎にもたらされた惨禍(さんか)を決して繰り返してはなりません。非核三原則を堅持しながら、「核兵器のない世界」に向けた国際社会の取り組みを主導することは、唯一の戦争被爆国であるわが国の使命です。・・・
「核戦争のない世界」、「核兵器のない世界」の実現に向け、全力で取り組みます。
「核兵器のない世界」の実現に向け歩みを進める上で土台となるのは、被爆の実相に対する正確な理解です。

 ここに述べられた「あいさつ」の言葉を実現するためには、どのようにすればよいのでしょうか。「核兵器のない世界」を実現するための土台となるものは、被爆の実相に対する正確な理解なのでしょうか。広島、長崎の惨禍を繰り返さないための唯一の道は、核兵器の使用を意図する国の野望を断固阻止することなのです。そして、その野望を阻止するために何をすべきなのか、これこそが「核兵器のない世界」を実現するための土台となるものなのです。

 ここで、そのような道を示されたのは、広島市長でも、広島県知事でも、子ども代表の「平和への誓い」でも、ましてや石破首相の言葉でもありませんでした。それは、今年初めて参列された台湾の代表者によって示された言葉でした。平和記念式典に初めて参列された台北駐日経済文化代表処の李逸洋代表(駐日大使に相当)が式典後の取材の中で述べられた言葉こそ、広島、長崎の惨禍を繰り返さないための道標であると思います。

 まず、李逸洋代表は、広島原爆の惨禍を二度と繰り返さないために大切なこととして、日米をはじめとする民主主義国家との連携の重要性を強調しました。そして、中国による核戦力増強に対しては、「強い反対の立場」を表明します。また、習近平政権による台湾周辺で続けられる大規模軍事演習に触れながら、何よりも防衛力強化の必要性に言及しました。そして、最後に次のように語ったのです。

 「民主主義国家と協力し、ともに中国の軍事行動の拡大を阻止することは非常に大事だ。」

 これこそが、世界平和を実現するために広島市長が、あるいは広島県知事が語らなければならない言葉なのであり、日本の未来を担うべき子どもたちが朗読しなければならない「真の平和への誓い」ではないでしょうか。そして、石破首相は唯一の被爆国の首相として、「二度と我が国が原爆の惨禍を被(こうむ)ることがないように、そして、世界平和を実現するために、中国の軍事行動を断固阻止するために、赤心(せきしん)報国の思いで尽力します」と誓わなければならなかったのです。

 来年の平和記念式典において、世界平和の脅威となっている中国の野望と暴挙を阻止するために世界中の首脳や代表者が心を一つにして立ち上がり、真の平和をつくり出すための決意を表明してくれることを切に願っています。

 平和をつくり出す人たちは、さいわいである、
   彼らは神の子と呼ばれるであろう。 (マタイによる福音書 5章 9節)