2026年4月15日水曜日

「久延彦 REPORT」(35):米国によるイラン攻撃の真の目的

  日本のマスメディアが決して伝えようとしない不都合な真実があります。それは、今回の米国とイスラエルによるイラン攻撃の真の目的です。2月28日の攻撃開始からすでに40日を過ぎてもなお、日本のメディア、そして、テレビや新聞に登場する専門家や有識者は、まるで申し合わせたかのように、米国の真の目的を隠そうとしています。それは、なぜでしょうか。聞こえてくるのは、米国に対する一方的な非難の言葉ばかりで、なぜ、米国がイランを攻撃したのか、あるいは攻撃せざるを得なかったのか、その真の目的を語ろうとはしないのです。

 「戦争における最初の被害者は真実である」という言葉があります。米国によるイラン攻撃の真の目的が隠され、知らされないままに時が過ぎるとすれば、そして、国民が真実を知らされることなく、米国の目的を誤解し、思い違いをしたままにイランに対する攻撃を非難し、また、異議を唱え続けるとすれば、それこそ、最初の被害者は真実となってしまうのであり、さらに、次の被害者は真実を知らされない世界中の国民ということになってしまうのです。

 それでは、米国のイラン攻撃の目的とはどのようなものだったのでしょうか。それは、イランによる核兵器開発の阻止にあります。イランは1980年代から核武装のための核開発をしてきました。そして、2000年代に入ると、隣国のパキスタンから密かに核濃縮技術を入手し、核兵器開発を本格的に開始していたのです。この事実が明るみになると、イランは「これは原発など平和的利用に限定された核開発である」と主張し、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる姿勢を見せてもいました。しかし、現実には未申告の核施設を密かに建設し、ウラン濃縮も民生利用とは考えられない程度に進行していたのです。

 ウラン濃縮について少し解説しておきたいと思いますが、天然に存在するウランはウラン238が99.3%で、ウラン235はわずか0.7%しか含まれていません。そこで、ウランを「濃縮する」というのは、ウラン238を除去しつつ、ウラン235の割合を増加させることを意味しています。なぜなら、原子力発電所で燃料として使用されるのは、ウラン235の濃度を3~5%に高めた「低濃縮ウラン」だからです。つまり、低濃縮ウランを使用して原子炉で効率的に連鎖反応を起こすことにより、発電が可能になるのです。

 ところが、ウランの濃縮度が20%を超えると、これは「高濃縮ウラン」と呼ばれ、技術的には核兵器の製造に利用することができるのです。また、ウランは濃縮されればされるほど、兵器としては小型で軽量になるため、現在の核兵器保有国は約90%に濃縮された「兵器級ウラン」を使用しているのです。そして、IAEAによれば、イランはすでに大量の高濃縮ウラン(濃縮度60%)を保有しており、核兵器に転用するため濃縮度を90%に高めるにはわずか数日から2週間もあれば充分であると指摘されているのです。そして、イランの濃縮ウラン保有量から単純計算すれば、およそ10個の核爆弾が製造可能という段階にまで到達していたのです。

 イランは核兵器開発をしていないと主張していますが、すでにIAEAの査察で明らかになったように、大量の高濃縮ウランを保有し、核兵器製造のための技術も完備されていることから、IAEAの理事会はイランによる核兵器製造を危険視し、「核不拡散条約」に違反しているという裁定を下しています。国際条約に違反し、核兵器製造に向けて着々と準備してきたイランに対して、国際社会が経済制裁を発動しているのは、至極当然のことなのです。

 しかし、それだけではありません。何よりも問題なのは、イランが1979年のイラン革命以後、「国是」としている理念なのです。それこそが、今回のイラン攻撃の真の原因であり、マスメディアがこぞってひた隠しにしようとする不都合な真実です。戦争の最初の被害者となった真実、国民に知らされることなく隠されてきた真実とは、いったいどのようなことなのでしょうか。それは、イラン・イスラム憲法の前文に書かれた次のような言葉です。

 「イランにおけるイスラム軍および革命軍は、単に国境を防御し安全を保障するためばかりではなく、神の名において全世界に神の法が打ち立てられるまで、聖戦を闘い抜くためにも組織されるのである。」

 憲法前文に明記された「イスラム軍(国軍)および革命軍(革命防衛隊)は、・・・神の名において・・・、聖戦を闘い抜くためにも組織される」とは、どういう意味なのでしょうか。ここには宗教国家であるイランの国是が宣言されています。それは、イランが世界で展開する聖戦の最終目標は、パレスチナにおけるシオニスト政権、すなわち、イスラエルを殲滅(せんめつ)することにあるということです。イラン革命の後、最高指導者となったホメイニ師(1902-1989)はパレスチナにおけるイスラエル建国を「悪魔の行為」と断言し、イスラエル国家を地図上から消去することを世界の課題とするようになりました。そして、イスラエル建国をいち早く承認し、イスラエルの擁護者であり続ける米国を大悪魔(Great Satan)と呼び、イスラエルを小悪魔(Little Satan)と呼んで敵視しているのです。そして、イランの国是に賛同し、その実行部隊ともなっているのが、パレスチナの過激派ハマスであり、レバノンの過激派ヒズボラであり、さらにはイエメンの過激派フーシ派なのです。そして、これらすべてのイスラム過激派組織はイランからの軍事的、財政的支援により、イスラエル殲滅のためのテロ活動を起こしているのです。

 イスラエルという国家を地図上から消し去ることを国是とするイランに対して、また、悪魔の政権であるイスラエルを殲滅するために武装闘争を続けている過激派組織に対して、イスラエルは自国の存立と防衛のために、何をすべきなのでしょうか。このようにイスラエルに対する敵意をあらわにするイランが、もし核兵器を製造し、その核兵器がハマスやヒズボラ、あるいはフーシ派などの過激派テロ組織の手に渡されたならば、国際社会はいかにしてイスラエルに対する殲滅行為を阻止することができるのでしょうか。イスラエルが自国に対する抹殺運動に対して全力で立ち向かい、国家存亡の危機に瀕する中で立ち上がっていることを、私たちは知らされているのでしょうか。

 国際機関は全くの無力です。国際連合は何もすることができません。一つの国家が他国によって地図から消されるという脅威にさらされていても、国家の存在そのものを悪魔の行為と断罪され、その政権が殲滅されることこそ神の名による聖戦であると宣言する暴挙に対しても、国際社会や国際法はなす術もなく、ただ手をこまねいて傍観するしかないのです。このような現実を誰よりも熟知しているのがトランプ大統領です。トランプ大統領が国際法の無力を告発し、国際機関が世界平和に対して無為無策であると断罪するのは、実は世界平和がいかにすれば実現するのか、その道をただ一人知っているからなのかもしれません。

 しかし、世界はトランプ大統領の真意を全く理解していませんし、理解しようともしていません。いたずらに批判するだけで、現実の世界情勢の厳しさを分かろうともせず、また、真摯に解決しようとする意志もなく、まるで傍観者のように高みの見物をして、好き勝手に無責任な批判と根拠なき反論をつらつらと語り続けるばかりです。世界平和を本当に願うならば、真の平和を心から欲するならば、私たちはどうしなければならないのか、今こそ世界の人々は真摯にその答えを探し出さなければならないのです。

 今回のイラン攻撃について、すべての人に問いかけたいことがあります。なぜ、イランは軍事利用以外には考えられないほどの濃縮ウランを大量に保有し、かつその存在を隠蔽(いんぺい)し、国際機関であるIAEAの査察を拒否するのですか。国際条約の規則を遵守せず、条約義務に違反しているという裁定が下されているにもかかわらず、なぜ、イランのウラン濃縮を国際社会は阻止しないのですか。さらに、イスラエルという一つの主権国家を地図上から消し去ることを国是としているような国を、どうして国際社会は黙認し、その国是を成し遂げるための実行部隊としてイスラエルに対するテロ活動を継続するハマスやヒズボラ、フーシ派などの過激派組織を強い言葉で非難しないのですか。

 現在の中東情勢の混乱は、もとをたどれば2023年10月に起きたハマスによるイスラエル南部襲撃テロ事件から始まっています。およそ6000人のガザ人が119カ所で国境を突破し、イスラエルに侵入しました。そして、イスラエルでは子供38人を含む1139名が殺害され、約250人のイスラエル市民と兵士が、生死を問わず人質ととしてガザ地区に連行されたのです。欧米の指導者や主要メディアは、この日をイスラエル史上最も血なまぐさい日であり、「ホロコースト以来ユダヤ人にとって最も致命的な日」と呼びました。まさにこの攻撃はイスラエル人に対する大量虐殺だったのです。このテロ作戦の背後にはイラン工作機関が関与しており、ハマスに武器と資金を供与し、さらにレバノンのヒズボラとの共謀を指南していたとも言われています。イスラエルに対する無差別攻撃やテロ事件のほとんどにイランは深く関与しており、イランこそが中東紛争の元凶と言っても決して間違いではありません。

 このような真実がどうして白日の下に明らかにされることがないのでしょうか。中東地域の平和と安定のために、その主敵であるイランに対して国際社会はどう対処すべきなのか論ずることがないのはなぜでしょうか。今回の米国とイスラエルによるイラン攻撃も突然引き起こされたことではないのです。指導者たちの気まぐれで始められた攻撃ではないのです。中東地域の平和と安定のために何ができるのか、核兵器開発を阻止する手立てがない状況において、いずれイランは核兵器保有国となるかもしれない、そして、いついかなる時にイランによってのみならず、その支援を受けたテロ組織が核兵器を使用するか分からない危機的状況に直面して、国家としていかなる決断を下すべきなのか、このような真摯な問いかけがあったことを私たちは知らなければならないのです。

 「戦争の最初の被害者は真実である」という言葉は、まさに現実のものとなってしまいました。そして、真実が被害者となったことで、世界は真実を知ることができなくなりました。そして、真実ではなく、都合の良いように歪曲され、捏造された、偽りの言説だけが世界に流布されるようになったのです。いきなりイランを攻撃し、圧倒的な軍事力によって国土を破壊し、無辜(むこ)の市民を犠牲にし、一国の文明を抹殺すると宣言してはばからないトランプ大統領と、その盟友であるネタニヤフ首相の所業こそ、悪魔の行為であり、決して許すことのできない侵略行為である、と断罪する人がどれほど多いことでしょうか。真実を知らされず、真実を隠された人たちの叫びと怒りが、現代の世界を暗闇の中へと引きずり込んでいるように思えて仕方ありません。

 イスラエル国家を地図上から消し去るという国是を掲げている宗教独裁国家がイランであることを、私たち日本人は覚えておかなければなりません。そして、このような国是を信奉している限り、いかなる理由であれ、イランが核兵器を保有することは許されないのであり、そのイランの手先となってテロ活動を行っているハマス、ヒズボラ、フーシ派などのイスラム過激派組織と世界は決して共存することなどできないのです。