7月9日に石破首相が街頭演説で語った「なめられてたまるか」という言葉ですが、この言葉はどのように英訳されたのでしょうか。ここにも日本の国難の影を見る思いになり、何とも言えない義憤が湧き上がるとともに、底知れぬ落胆の気持ちにため息が出てしまいます。
まず、日本政府は「なめられてたまるか」という石破首相の発言の重大さを少しは理解していたのか、何とか英訳の際にそのニュアンスをごまかそうとしました。そして、「We won't taken lightly」と訳しました。これは直訳すれば、「我々は軽く見られたくはない」という意味です。随分と意味合いが変えられていますが、ここには外務官僚の努力の跡が見えます。唯一の同盟国である米国に対する石破首相の無礼と粗相(そそう)を何とか隠そうとしたのでしょう。
ところが、駐日米国大使館は公式的に「We are not backing down」と英訳しました。グラス駐日米国大使はトランプ大統領と非常に近しい間柄であることはよく知られていますが、恐らく、「We are not backing down」と石破首相が米国に対して啖呵(たんか)を切ったことが、そのままトランプ大統領に伝えられているはずです。
「back down」とはどういう意味なのでしょうか。これは交渉や議論の際に自らの要求や主張について、「尻込みする、譲歩する、取り下げる」という意味です。つまり、石破首相は米国との関税交渉について、「私は絶対に尻込みしない、言うべきことは主張し、そのことについては譲歩することも、取り下げることも一切しない」と断言しているのです。同盟国である米国との交渉において、このように主張をすることが国益にかなうのでしょうか。そもそも交渉とは互いが歩み寄り、譲歩し合うところで成立するものなのではないでしょうか。
実は、このような交渉の手口はある国とそっくりなのです。石破首相と同じように米国に向かって喧嘩を売り、公然と立ち向かおうとしている国があるのです。それが、中国です。同じく米国との関税交渉について、中国の外務省報道官は次のように英文で発信しています。
We are Chinese. We are not afraid of provocations. We don't back down.
「我々は中国人である。我々はいかなる挑発をも恐れることはない。我々をなめるな。」
いつから、日本は米国の同盟国ではなく、中国の属邦のような国に成り下がってしまったのでしょうか。中国の威勢をまねて、まるで虎の威を借る狐のような国に堕(だ)してしまったとするならば、これこそ歴史上かつてないほどの国難です。日本国の悠久なる歴史の中で、これほどに日本という国の誇りと威信を貶(おとし)め、傷つけ、日本国と日本国民に恥をかかせるような為政者がかつていたでしょうか。
今こそ、日本国民は声をそろえて、石破首相に対して訴えるべきなのです。「なめられてたまるか。私たちは言うべきことは、たとえ日本国の首相であっても正々堂々と言わなければならない。守るべきものは守る」。中国の走狗(そうく)となった石破首相という国難に立ち向かうべき時は、今なのです。